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コデザイン推進チーム 臨時セミナー

category : セミナー 2018年9月5日 

以下にてR-CCSコデザイン推進チーム 臨時セミナーを開催いたします。

日時 9/11(火) 13:30-14:30
場所 神戸大学 惑星科学研究センター 
(最寄駅 ポートライナー 京コンピュータ駅前)
https://www.cps-jp.org/access/
講演者  深川宏樹  氏(九州大学大学院工学研究院機械工学部門)
タイトル  数千億自由度の超大規模流体構造連成解析ソルバー
概要
 本セミナーでは「完全陽解法,Position Based Dynamics,離散微分形式を用いた非構造格子の流体構造連成解析」について説明をする。現在の製品設計ではCADがよく用いられる。このCADデータを用いて,シミュレーションによる製品性能の事前検証ができれば,設計工程を高速化できる。例えば,流体軸受の事前検証には,潤滑油の流れで生じる力で軸受が変形する様子を知る必要がある。一般に,複雑な工業製品の検証では大規模な流体構造連成解析が必要とされる。本研究では,設計工程の改善(工数削減と精度向上)を目的として,スーパーコンピュータで数千億自由度の大規模流体構造連成解析を可能とするソルバーの開発を行った。
 解析対象をレシプロエンジンで使われるクランクシャフトとコンロッドの接合部の流体軸受とした。コンロッドとはピストンをクランクシャフトに結合する部品であり,ピストンの上下運動をクランクシャフトへの回転運動にして伝達する。コンロッドの軸受とクランクシャフトの軸との隙間は潤滑油で満たされており,軸の回転に伴って油膜内に流れが生じる。潤滑油が狭小部に向かって流れる領域では,油膜内の圧力が高くなり荷重を支える。一方,狭小部から潤滑油が通り抜けていく領域では,圧力が溶解気体の析出圧力まで低下してキャビテーションが発生する。自動車エンジンは稼働時に毎分数千回転し,軸受と軸との間にある油膜の狭小部は0.1μmになり,軸受面上にかかる圧力は局所的に百MPaに達する。 流体軸受の動解析を精度良く行うには,十分に細かいメッシュで大規模なモデルを高速に解くソルバーが必要である。
 一般に大規模な流体構造連成解析は計算量や並列度の観点から難しいとされている。また,近年の並列計算機はメモリバンド幅が演算性能に比べて極端に低い。つまり,Byte/Flop(B/F)が低い。このような計算機の演算性能を引き出すにはレジスタやキャッシュメモリが有効に使え,通信量を抑えられる参照の局所性が高い計算方法を用いる必要がある。
従来の大規模流体構造連成解析には,流体と構造の方程式を各々独立に解き,境界面を修正して解を収束させる反復法が良く用いられてきた。しかし,反復法で解を収束させるには流体と構造の方程式を何度も解く必要があり,計算量が膨大になる。特に,有限要素法による応力解析ではメモリバンド幅が必要であり,近年のB/F値の低い計算機では計算速度が上がらない。そもそも反復法では,流体軸受の弾性流体潤滑解析のように薄膜を扱う問題で解を収束させるのは難しい。したがって,流体軸受の数値解析では並列性能がでない直接法を用いる他なく,スーパーコンピュータを用いた大規模計算は不可能だった。
 そこで,我々は大規模な流体構造連成解析を実現するために,完全陽解法を基本としたソルバーを開発した。完全陽解法では,ある領域の時刻の状態を時刻の近傍の物理状態から求める。この方法は参照の局所性が高く,等分に解析モデルを領域分割すれば並列度は100%になる。つまり,大規模なモデルではコア数の増加に比例して計算速度を上げることができる。また,この方法はByte/Flop(B/F)の低いGPUコンピューティングにも向いている。
 次に我々は非構造格子上での流体解析のために離散微分形式を用いたアルゴリズムを開発した。CADデータからメッシュ生成をする場合に,複雑な形状では非構造格子を用いることになる。したがって,本アルゴリズムは,複雑な形状データをもつ流体構造連成解析に役に立つ。
 本セミナーでは,以上の概要を説明する。

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